数分もしないうちに彼から電話が入った。
迷わず受け取る私しかそこにはいない。彼の声を聞くのが好き。
『ごめんね、事務所にいたから』
いつも通りの優しい声だ。
「ごめんなさい、仕事中だよね」
『いや、もう営業車で外に出たから大丈夫だよ、どうしたの?』
彼の質問に言葉が詰まる。
「うーん…あのさ、」
私の上手く出ない言葉が外に出ようとしない。
『ん?何かあった?』
「今日会うの止める?何か…わかんないけど」
『どうしたの?急に…』
どう伝えたら良いのか、言葉を選ぶ。でも、選ぶ言葉が並ばない。
『罪悪感?』
「それは違う!」
それだけは否定できる。そんな気持ちはない。
『でも、会いたくないって気持ちがあるなら、無理には会えないから、真奈の気分に任すよ』
彼は私がこんなこと言っても、私の意志を第一にする。
「…うん」
『お昼は食べた?』
「まだ」
『お腹空かない?』
「空いた」
『今どこ?』
私は駅名をあげてる。
『行っていい?』
「うん、待ってる」

着いたら連絡するからと言って、彼は電話を切った。