5時半を過ぎると外も肌寒くなってきた。
彼からの電話を取り逃さないように、ショッピングモールの屋外に設置されたベンチにかけた。
隣のベンチにはカップルが座り、近くで店を出しているバーガーにかぶりついていた。鳩が寄ってきて、彼女が足で鳩を追い払う。
私と彼なら、こんな時どうするのかな。

モールの一階に隣接したドラッグストア前には、学生と思える若い男女が集団で集まっていた。
歓迎コンパだろう。
私と彼の年齢差だったら、大学が一緒でもすれ違いか。

携帯が震えた。
『もしもし、お待たせ。遅くなってごめん』
彼はそう言うと、車で拾う場所を告げた。
モールの裏のデパート。ショッピングモールに人が集まり、人がこちらに流れてきているようなデパート。
交差点を渡ると人はみんな逆に歩いて行く。
まるで、私だけが流れに逆らっているみたいだ。


待ち合わせ場所にしばらく立っていると、車が到着した。
会社の車に女の子乗せて帰って良いの、と聞きたいけど、ちょっとダメなくらいが良いのかもしれない。

彼はまた笑顔で私を迎えた。

「髪結ったの、可愛い?」
日中熱くなって、彼と一度離れてから髪を結い直した。三つ編みを入れて、左側にバナナクリップでまとめてみた。
黒色のカーディガンを羽織れば少しくらい大人っぽく見えるかな、とあたしなりの頑張り。
「うん、スッキリした、結んでも、下ろしても可愛いよ」

タクシーやトラックの間を擦り抜けるように走り、私の知らない場所へ続いていく。

「…ホテルで良いの?」
遠慮がちに彼は聞く。
私は頷く。
「なら、コンビニでドリンク買っていこうか」
近くの赤い丸印のコンビニに車を停める。
私は彼の腕を掴み、隣を歩く。今なら、私は彼の彼女になれる。