…どくん…
高鳴る心臓。
湧き出る汗。
外から聞こえてくる蝉の声が耳障りで仕方がない。
歩さんと沙紀さんは沈黙したまま口を開こうとはしない。
『あの…』
『どうして…百合ちゃんはそんな事聞きたいのかな?』
歩さんは下を向いて私に質問をした。
『パパが…パパが最近、私に悲しい顔をするんです…何か辛そうで…私、前、パパとママに由来の事について聞いたんです…でも教えてくれませんでした。気になっちゃって…知りませんか?私の名前の由来…』
すると沙紀さんが口を開いた。
『百合ちゃんに教えていいか…分からないのよね。歩…どうする?』
『確かに…俺達もびっくりしたんだ。優に初めて子供の名前を聞いたときは…覚えてるかな?初めて百合ちゃんにあった時《優らしいな》って言った事…』
『はい…』
『本当にに優らしいんだ。優の子供に百合って名前を付けた事。優は忘れたくないんだと思う…ずっと…覚えておきたいんだと思う…』
『あの…えっと…誰の事ですか?忘れたくない人って…』
歩さんはゆっくり私の方へ顔を向けた。
『優が昔愛していた人だよ』