『本当に?』


『本当に…本当…』

『百合…嘘つかないで。俺百合の為に何かしたい!無理かな?ダメかな?』


『修君は優しいね…』


すると突然、修君は私を包みこんだ。
優しくて、温かくて…
体温からでも修君が優しい人だと伝わってくる。


『しゅ…修君?』


『俺!百合が好きなんだ!ずっと…ずっと…前から!俺じゃ…だめ?百合を守れないかな…』


『修君…』


修君の温かさが、傷付いた心に染みる。
でも…私の答えは決まっていた。
光輝には勝てない。
修君はいい人で優しくて、頼りにもなる。
でも…光輝には…
光輝を超える人は居ない。


『…ごめんね…』


私の答えはもう決まっているの。
私はゆっくり修君を私から離した。



『私…光輝が好きなの…今も変わらない。一回フラれたけど…でも好きなの。光輝に泣かされても、光輝に酷い事言われても…好きなものは…好きなの…ごめんね、ありがとう…』


『やっぱり…ね、初めて会った時も、百合…光輝ばっか見てたからさ…なんとなく気付いてた…ありがとな…百合』


修君は最後に《ありがとう》とだけ残して、私の前から去って行った。


私はただ、修君の大きな背中を見つめる事しか出来なかった。


まだ残っている─…
修君の温かさ…


人間はとても温かいんだ…


《ありがとう》が言えなかった…
それが一番悔いに残ること。