『顔の輪郭は、笑に似てるね。目は俺かな?』
僕は赤ちゃんを抱きながら、そう呟いていた。
『優、早くも親バカね…』
『だって可愛いんだから仕方ないだろ!』
『あっほら危ない!優、貸して?』
僕は渋々、笑に赤ちゃんを渡す。
『産まれてきてありがとう。百合ちゃん…』
…時が止まったかと思った─…
『え…笑…今なんて…』
『この子の名前を呼んだのよ?』
『でも…今…百合って…』
『この子の名前は百合…』
『笑…それで…本当にいいのか?お前が…辛くなるんじゃないのか…?』
笑は顔色ひとつも変えずに、僕を優しい笑顔で見た。
『あなたには…百合さんの存在を忘れて欲しくないからね…残された人生、あなたは百合さんの名前を呼ぶはずだった…でもそれが出来なくなった…
その変わり…この子の事を百合って呼んで欲しいの。忘れないで欲しいから…』
『笑…お前…いいのか…?』
『大丈夫よ!私は優も百合も百合さんも、みんな大好きだから』
笑の一言で決まった、
この子の名前…
《鈴木百合》
僕の愛しい人との子供─…
僕の愛しい子供──…