頭がついていかない。
婚約、なんて。
今日はエイプリルフールじゃなくて、クリスマスだよ?
「……それから、残念なお知らせが1つありますの」
呆然としているあたしたちを嘲笑うように、胡桃坂さんはクイッと顎を持ち上げた。
見下されているような目付きに、思わず下唇を噛んだ。
……嵌められてる?
いつから?
最初から?
…最初って、いつ…?
「既知の事実かは存じ上げませんが………わたくしの未来の旦那様をたぶらかしていた生徒が1人、いらっしゃるんです」
どくんっ
…まさか。
目を、逸らせない。
………わかってた、はずなのに。
胡桃坂絵理子は決して、場違いなあたしの存在を認めていないことを。
いつかはあたしを潰しにかかるはずだと、予想できたろうに。
少なくとも、華苗や繭、蕪城先生と打ち解ける前のあたしなら。
絶対に、こんな事態を避けられたはずなのに。
いつから……隠し事を続ける孤独が寂しいと思い始めたっけ?
「ねぇ、そうでしょう―――赤城春姫さん?」
ああ本当に。
とんだクリスマスプレゼントだよ。