「春姫、このミートパイがとっても美味しいですわ」
『あたしも食べる!……たべ、ます』
「ふふ、華苗さんの好きなフォアグラをお持ちしましたわ」
「繭さん、ありがとうございます!……はあ、さすがですわね。美味しいです」
『(フォアグラってキノコ………いや、魚の卵だっけ…?)』
こういう時、庶民はなかなか会話に入れない。
周りにはクラスメイトがまばらに集まっていて、あたしも身の振る舞いを気を付けようと神経を尖らせた。
……先生、やっぱりいないなぁ。
クリスマスにケーキを一緒に食べるって約束、覚えてますか…?
「赤城さん。その葡萄のタルトはいかがでしたか?」
『へっ?おおおっ美味しかっ、び、美味でしたわ!』
「ふふ、ありがとうございます。私もいただきますわ」
「あら、私もくださいな」
「赤城さんはフルーツがお好きですの?」
『はいっ!?え、あ、はい、す、す、好きですよ』
動揺しすぎているあたしを華苗と繭が笑っていた。
……だって。
こんなに周りに人がいるなんて、慣れなくて。
開放的な気分からか、普段はめったに話さないクラスメイトまでがあたしに話し掛けてくれた。
…それがすごく、嬉しかった。