あれから。
特になにが起きるわけでもなく、あたしたちは普通に食事を楽しんでいた。
……胡桃坂さんの性格を考えると、なにか企んでいそうだと思ったのに。
「春姫、いつまで眉間に皺を寄せていらっしゃるの?」
困ったように笑う華苗の声にハッとして、思わず眉間を手で隠した。
…いつから、だったんだろ。
隣では、繭が上品にスパゲッティをフォークでくるくる巻き取っている。
う、うまい。
「お料理はたーんと毒味しましたわ、大丈夫ですわよ」
悪戯に笑う繭にあたしも笑い返し、料理を口に運んだ。
毒味なんて、そんな。
料理を疑っていたから食べなかったなんて、繭が思ってるわけがない。
ただ、あたしを勇気づけるためだけに、彼女はそう言ってくれた。
『………美味しい!え、なにこれ!めっちゃ………とても美味しいですわ。一体どんな名前の料理なのかしら……』
あまりの美味しさに飛び出してしまった素の自分にひやりとしながら、あたしは無理やり口調を戻した。
…危ない、危ない。
こんなんじゃ自らバラしてるも同然じゃん…。
うかつすぎる、と反省しながらあたしは次々と料理に手を伸ばした。
この時は純粋に、クリスマスパーティーを楽しんでいたんだ。