「お待ち申し上げておりました。艷倉様、炎王寺様、赤城様」
リムジンの扉を運転手さんが開けてくれたかと思ったら、車の脇には既に男性が立っていた。
清潔感のある白髪を優しく撫で付けていて、纏うオーラにはこちらが気圧されそうな迫力がある。
「あら、池澤さん。お出迎えありがとうございます」
「お久しぶりです、艷倉様。大切なお客様ですから、当然のことでございます。それよりお嬢様方、お召し物が大変よくお似合いでございますね」
恭しく深々と下げた頭をゆっくり上げ、老人は目尻の皺をくしゃりと寄せて笑みを浮かべた。
こ、これが、巷で流行りの執事さんっ…!!
「…赤城様?」
『…………え、はい?』
「お二方が既に…」
ハッと気付くと、2人は無情にもさっさと前を歩いていた。
「春姫、行きましょう」
「もうだいぶ人が集まっていますわ」
『は、はい!あの、それでは、失礼しますっ』
あたしは咄嗟に池澤さんに向けて一礼し、いそいそと履き慣れないヒールで2人の背中を追い掛けた。
大きく開け放たれた扉をくぐると、煌びやかなシャンデリアの灯がいくつも瞳に飛び込んできた。