「お待たせしました、春姫!」
「私たちのドレスはどうですか?」
突然、バンッ!と扉が開いた。
口から心臓が飛び出る代わりに肩がびくんっと跳ねた。
『っ!お、おおおかえり!2人ともよく似合ってるよ、ほんとにお姫様って感じ…!』
し、心臓がバクバク言ってるんだけど…!
首を傾げる華苗と繭は、背中がぱっくり開いた大人っぽいドレスを着ていた。
対照的にあたしは、胸元と裾にレースと花をふんだんにあしらった可愛いドレス。
非現実的な世界にいるような錯覚を覚えて、思わず頬に手を添えた。
「春姫?ぽやぽやしてますわよ?」
「待ってるのが退屈で、眠くなってしまったかしら?」
『ち、違うの!……あのね、今日…』
言いたくても言い出せなかったことを、言葉を何度もブチブチと切りながら吐き出した。
…あたしがお嬢様じゃなくてただの庶民だってことを、クリスマスパーティーに乗じて皆にバラす。
初めは苦い顔をしていた2人も、胡桃坂さんの名前が出ると渋々頷いてくれた。
「……無茶はいけませんわ」
「ええ。念を押すようですが……無理にバラすことはないです」
心配そうに眉を顰める2人に対して申し訳ない気持ちが膨らみ、どうにかそれを押し潰した。
『…うん、わかってるよ。ほんとにありがとう……華苗、繭』
―――さあ、いざ戦場[パーティー]へ。