蕪城先生はひくりと口元を引き攣らせて、あたしの頬をぐにんっと引っ張った。


…それはもう、容赦なく。



『いひゃいいひゃいひゃひゃいいいいっ!!!!!!』


「あーん?なんだって、春姫ちゃあん…?」




ど、どきっ!


ななな名前で呼ばれちゃった…!


頬が伸びて戻らなくなりそうなくらい、思いっきり引っ張られてるけど!!




「……お前、なに嬉しそうにしてんだ?そうだとは思ってたが……マゾ?」


『っ!ひ、ひひゃひはふ!』


「ははっ!餅みたいだなァ、よく伸びる」




触られた頬が熱くて、あたしは逃げるように先生の手から抜け出した。




『~~~っ、もう!あ、あたし帰りますからねっ!!』




これ以上一緒にいたら、なにかの弾みでうっかり告白しそうだよ…!


鞄を引っ付かんで外に飛び出そうとした時。




「―――クリスマス、楽しみにしてる」




ふわりと耳元で囁かれた甘い吐息に、身体の芯がビリビリと痺れた。




『っ!!!』


「んなに赤くなってんじゃねーよ、…春姫」




意地悪な笑みを浮かべた先生が、あたしを追い越してさっさと教室を飛び出して行った。




『……………美葛、先生』




残されたあたしは、熱に浮かされたように呆然と立ち尽くしていた。