高等部―――1年生。
『…高等部から入学して参りました。赤城春姫と申します。よろしくお願いいたします』
初めは、なんの関わりもなかったんです。
ただ、その年赴任してきたばかりの副担任の先生が―――
「それでは……艷倉さんと炎王寺さん。大変仲がよろしいと伺っておりますので、赤城さんの面倒を見てさしあげてください」
……………はい?
もちろん私だけじゃなく、クラス中がピシリと固まった。
繭に至っては、目を見開いたまま微動だにしない。
「……先生。あの、お言葉ですが…」
『艷倉さん……と…炎王、寺さん…ですか?ご迷惑お掛けしますが……よろしくお願いします!』
…こ、断れない…!!
「………え、ええ。もちろんですわ!」
「……こ…こちらこそ、よろしくお願いします!」
それから始まったのは悪夢の日々―――――
では、なかった。
「(繭は意外と優しいんですね…)」
「(華苗は意外と気配りがお上手…)」
「(……繭は私よりずっと政治経済に詳しいですわ)」
「(…華苗は随分頭が切れます。そんな発想、私にはできないわ…)」
移動教室があれば、春姫が迷わないために私たちが付き添わなければいけなかった。
だから、無理やりにでも一緒にいる時間は増え続けた。
そんな……ある日。
『華苗さん、繭さん!今まで本当にありがとうございました!』
入学から2ヶ月後、春姫が校舎の内部を全て把握した。
私たちが一緒にいなきゃいけない理由は、なくなった。