「良いですか、春姫」
「胡桃坂さんを負かしますよ」
2人は熱の篭った口調でそう言うと、同時にあたしの手を取った。
……頼もしいどころか、もう神様かなにかに見えてくる。
華苗と繭がなにをしようとしているのかはわからなかったけど、あたしのためにしてくれるのは痛い程伝わった。
『………ありがとうっ…!ごめんねっ…』
堪えきれず涙ぐむと、華苗と繭は優しくあたしを抱き締めた。
ふわり。
形容できない、花のように芳しい香に包まれた。
『…か、なえっ……まゆ………』
「感謝したいのは、私たちの方です」
華苗が柔らかく紡いだ言葉に、驚きを隠せなかった。
『っ!あたしは、なにもっ…』
「いいえ。私たちがどうしても助けたい存在―――親友になってくれたのは、あなたですわ」
繭の声に少し涙が滲んでいるのを感じて、あたしは思わず口を噤んだ。