『キモチワルッ!!!』
咄嗟に出た言葉に、悪意はなかった。
…だから、頑張って言い訳しておこうと思う。
だって!
だって!
ねぇ!?
近場のスーパーのタイムセール、全部把握してるとか怖いから!
さすがにあたしでもやらないからっ!
キモチワルイ、が相当効いたのか蕪城先生は若干涙目に見えた。
『(…しょぼくれた犬、みたい)』
さっきまで狼…いや蛇さながらの圧迫感があったのに、今じゃ皆無だ。
思わず吹き出すと、蕪城先生の口元がひくりと引き攣った。
「テメェ赤城!気持ち悪いとはなんだ!俺は毎朝の貴重な時間を惜しんで、広告に目ェ通してきてんだよ!わかるかこの、苦学生でもしそうにない必死感!野菜の高さもバカにできねぇ…!」
切実に訴えてくる先生は、なんだか可愛かった。
あたしの嘘は結果的にバレて、しかもそれを問い詰めるべきところなのに。
何故か蕪城先生の方が、慌てて弁解していた。
『……あははっ…』
口元が緩んだ拍子に、思わず涙腺も緩むところだった。
…いや。
既に緩まった涙腺から瞳に溜まった涙を、笑った所為にしただけだった。
―――蕪城先生。
あたし、先生といちゃいけないんだよ。