「…っ、」




蕪城先生が一瞬たじろいだ隙を見逃すことなく、あたしは捲し立てるように言った。




『あたしは嘘吐きました!バイトなんて嘘です!いつぞや行けなかったスーパーのタイムセールに間に合いたかったんです!』




熱を帯びた言葉を叫んでも、嘘を重ねることは忘れなかった。


廊下を通る生徒の足音が理性をかき集めたお陰で、どうにか声も張らずに済んだ。




「……お前、まだタイムセールのこと引き摺ってんのか…!?」




愕然とした蕪城先生を見て、あたしは眉間に皺が寄るのを感じた。


いつぞや、というのはもちろん一昨日。


テストの出来が悪すぎるための数学補習―――という名目で呼び出された所為で、あたしはタイムセールを逃してしまった。


別に根に持ってたわけじゃなくて、ただ思い付いたのがそんな陳腐な嘘だっただけで。


…でもっ!!




『引き摺るに決まってますよ!!驚異的なあの、じゃがいもの安さ!!二度とお目にかかれないって、近所のおばさまたちは口を揃えて言ってます!』


「どんなネットワークだよそれ!つーかお前まだ高1じゃねぇか!」


『敵であり仲間でもある、それが主婦友なんですよ!』


「なんの話だよ!…ちっ。……それじゃあ聞くけどな、昨日どこのスーパーがタイムセールやってたんだ?」






……えっ?



予想外の質問に、あたしは目を丸くした。