「テメェ、赤城っ…!やっと捕まえたぞ…!」
かっ…!!
『ふぁぶわびしぇむしぇっ…!?!?』
「…あぁ、悪い。口塞いだままだった」
口からパッと手が外され、あたしは急いで酸素を取り込んだ。
…もちろん、酸素を補給した後は。
『かかか蕪城せむぐっ!!』
「バカ、叫ぶな!生徒がまだいんだろ!」
小声なのに凄い剣幕で怒鳴られ、あたしは我に返ったようにそっと耳を澄ました。
……この教室の前を通り過ぎる足音が、絶えない。
それもそうだ。
よくよく思い返せば、この教室は昇降口の目の前にある。
『(って、それめちゃめちゃ危険じゃ!?)』
漸く事の重大さに気付いたあたしは、意味もなく拘束が解かれた両手で口を押さえた。
…平常より格段に速い自分の心音が、やたらと耳に障る。
「…………で?」
普段よりも一段と低い声音に、不謹慎にも耳朶がぶるりと震えた。
『…え、いやっ…その…!』
トンッ
背中に壁が当たったとわかった瞬間、それを引き金にして嫌な汗が流れ始めた。