『(それで、結局……)』
母が行きたくても行けなかった皇鈴学園への入学を、あたしは決めた。
でも、そこには問題があって―――
『年間授業料………高ぁああっ!は、ちょ、なにこの値段!?』
「そうなの、とっても高いのよ」
苦笑しながら母が答え、そして金銭面を巡る家族会議が開かれた。
…その結果、あたしはコンビニでアルバイトをすることに…。
家族皆で生活を切り詰めて、家も小さなところに引っ越した。
手狭なくらいがちょうど良くて、前の家よりも気に入ってる。
それでもまだ家計は苦しくて、平日は学校から帰宅してすぐにスーパーの特売に走ってるんだけどね…。
誰にもバレないように学校から敢えて離れた家に住んでるけど、往復するのが大変。
バスに乗ると高いし、電車に乗っても高いし、……まぁなにで登校してるかっていうと、徒歩&自転車なんだけど…。
『(あー、初日は筋肉痛で死ぬかと思ったなぁ…)』
密やかに思い出し笑いを零し、隣を歩く最も親しいであろう友人を一瞥した。
外部入学者が1人で不安だったあたしに優しく接してくれた、とても良い人たちだ。
黒髪ポニーテールの彼女は、艷倉 華苗(あでくら かなえ)
茶髪ゆるふわパーマの彼女は、炎王寺 繭(えんおうじ まゆ)
入学してからいつもこの3人でいるけど、あたしが“偽お嬢様”だということは―――
まだ、誰にも言ってない。