放課後。


蕪城先生に出会わないよう細心の注意を払いながら、どうにか教会に辿り着いた。


華苗と繭にもバレるわけにはいかなくて、あたしはバイトが忙しいんだと嘘を吐いた。


……2人にはもう嘘なんて、重ねなくても良いんだと思ってたのに。


ズキズキと痛む心に、背中を向けた。




『……胡桃坂さん』




予想通りシスターがいない教会は、がらんとしていた。


キャンドルが仄かな光を揺らしていて、天井には豪勢なシャンデリア。


淡い灯に囲まれたその奥、祭壇の前に彼女はいた。




「あら、無理してそんな偽物を演じなくても良いですわよ。寧ろわたくしが、聞き苦しくてかないませんわ」




嫌味な笑いを浮かべたまま、彼女はそっとあたしを手招きした。


おとなしくそれに従い、教会の扉を自ら閉ざした。



―――バタン…



静寂で、耳が痛い。


胡桃坂さんは目を爛々と輝かせて、あたしが近付いてくるのを見ていた。


彼女の目の前に立ち、あたしは用意していたセリフを間髪入れずに吐き出した。




『っ…お願いが、あるの!!』




待ってましたと言わんばかりに、胡桃坂さんは妖しく目を細めた。




「ふふ……聞いてさしあげても、よくてよ」







―――蕪城先生。



あたしが絶対に、護るから。


お礼は、ザクロのロールケーキで許してあげるよ。




…なんてね。