最後の授業―――数学が始まった。
せっかく、蕪城先生をじっと見ててもバレない授業なのに。
鐘の音が耳に入らないくらい、あたしは呆然としていた。
…だって……
あの封筒の中に、入っていたのは…
“ごきげんよう、赤城さん。
もう写真はご覧になりましたか?
放課後、教会でお待ちしています。
どうするかは、あなたがお決めになって。”
便箋が1枚と―――
―――写真が、数枚。
あたしがバイト中のものから、帰宅途中や朝のごみ出しまで……写真は様々だ。
『(っ、なんで…!?)』
絶句どころじゃない。
『(……あたしがお嬢様じゃないこと、知ってるんだ…。放課後、行くしかないっ…)』
さっきの胡桃坂さんの不敵な笑みの意味は、これだったんだ…。
唇を噛み締めて腕時計に目をやると、かなり長い時間考えに耽っていたらしい。
あと数分で、授業終了だった。
『(………先生……放課後行けなくて、ごめんね…)』
でも、多分。
『(…………もう、行けないけど)』
教壇に立っている蕪城先生を見つめて、滲んできた涙をそっと拭った。