『(…ま、なんでもいいや)』
あたしがほんとはお嬢様のフリをした、ただの庶民だってことも。
そのお陰で蕪城先生との繋がりが生まれたんだから、この学校に入ったことを後悔はしてない。
華苗と繭と友達になれたのも、全ての根源はここに入学したから。
『(……お母さん、ありがと。あたし、この学校がやっと好きになれそうっ…)』
身分違いだと、毎日毎日思い知らされる環境も。
一緒にいたいと思える人ができるだけで、違う色に見えてくる。
……嫌いだった先生も、好きになれた。
『(…あたしはここで、卒業するんだ)』
お母さんが果たせなかった夢、ちゃんと叶えるよ。
つまらない授業が終わるまでずっと、あたしはまるで走馬灯を見るかのように思い出に浸っていた。
今思えば、これは。
確かに走馬灯だったんだと、言い切れるのに。
授業終了を告げるチャイムを聞き流し、席から立ち上がった時だった。
「ちょっと良いかしら、赤城さん」
…嫌な予感は、確かにしていた。
『……なんでしょう、胡桃坂さん?』