『実は昨日…』
キーンコーン、カーンコーン…
「あら、チャイムが鳴りましたわ」
「また後で聞かせてくださいな」
2人はひらひらと手を振って、軽やかな足取りで自分の席に戻った。
言いそびれたことで若干不完全燃焼になりながらも、どうにか4時間目の英語を乗りきった。
『(…あー…眠かったぁ…)』
ふあああ、と押し寄せる欠伸の涙を必死で噛み殺し、表情には一切出さなかった。
……お嬢様なら、公衆の面前で欠伸をしたりしない。
いくら華苗と繭には隠さなくて良いと言っても、学校では今まで通りの振る舞いをしなければいけない。
『(ちょっと面倒だな、この切り換え…)』
…なんて。
ほんとは理解してくれる人が3人もいることが、死ぬほど嬉しいくせにね。
面倒と言いながらもつい緩んでしまう口元を、掌で覆った。
このまま、なにもかもが上手くいく―――あたしはそう、勘違いしていた。