『あの、先生!違っ…いや違わなくもなくもないみたいなアレなんですけど、ああでも泣いた理由ではないですからっ!!』
「……は?胡桃坂に泣かされたんじゃないのか」
本人は無意識なんだろうけど、ギロリと冷たい視線で見下ろしてくる蕪城先生に少し怯んだ。
とにもかくにも誤解はとくべきだと思い、あたしは最初から最後までを全て話した。
蕪城先生は瞳を閉ざしたまま、たまに相槌を打ってあたしの話を聞いていた。
立ち話もなんだろうと思ったけど、先生がどこかピリピリしていたから口には出さなかった。
『………って、わけなんです。だから、胡桃坂さんは関係な…』
「お前が泣いた理由の件はさておき、前半は俺の所為だな。……悪かった」
え?
驚いて顔を上げると、相変わらず苦々しく顔を顰めた蕪城先生がいた。
謝罪の意味がわからなくて、あたしは返事もせず立ち尽くしていた。