…………はぁぁぁあ?
テメェ、今なんて言った…?
あ゙ぁあああっ!?
地を這うような声が喉まで出かかり、必死にそれを飲み下す。
びきりと膨張する血管がはち切れないか心配しながら、あたしは振り向いた。
「あら、ごめんなさぁい?ついつい本音が出てしまったのぉ」
まさに下衆と呼ぶのに相応しい女
―――胡桃坂 絵理子(くるみざか えりこ)
某大手グループの社長令嬢という、これまた王道な立場。
親の権力と自分の物ではない金を盾にして、あたしが転校してきた時には既にクラスのボス的な存在だった。
そしてあの、蕪城先生のことが大好きらしい。
『…いえ、本当のことですわ。私がもっと賢ければ、蕪城先生の手を煩わせることもなかったのです…』
しょんぼりと悲しんだ表情を作ったまま俯き、あたしは小さな声でそう言った。
すると突然、華苗と繭が胡桃坂さんとあたしの間に立ち塞がった。
「胡桃坂さん、そんな言い方は酷いと思いませんか?壊滅的だとか、あなたが春姫さんを侮辱して良い理由は何一つとしてありません」
「そうですわ。春姫さんだって一生懸命勉強された上でのこと。なにより本人が一番傷付いているはずです」
まさか2人があたしのために、そんなことを言ってくれるとは思わなかった。
だって、あたし……2人にはなにも伝えられてないのに…。
『…華苗さんっ……繭さんっ…!』