え、え、…えっ?
戸惑うあたしを余所に、先生は次の煙草に火を点けた。
いつもなら煙草の匂いなんて顔を顰めるくらい嫌いなのに、今はそんな嫌悪を感じない。
苦い酸素でも、良い。
「あ?お前が言ったんだろ、愚痴聞けって。ほら、言ってみろ。閉校時間まで聞いてやるぞ」
けらけらと笑いながら、蕪城先生は肘を付いた。
切れ長の瞳は優しげに細められていて、その視線の矛先は自分なんだと気付くのに時間がかかった。
……目、合わせられない。
『………あんなふざけた要求、呑んじゃって良いんですか?』
自分で言ったくせに、ふざけたって!
1人でツッコミをしながら、あたしはそろそろと蕪城先生を見上げた。
…視線が刺さって、痛い。
「なんでだ?良いじゃねぇか、共謀。俺もなんか要求、考えとかないとなぁ」
にやりと笑った蕪城先生を見て、何故か顔に熱が集まるのを感じた。
『せ、先生の要求ってなんかいかがわしそう!』
「…ほーお?そういう系統が良いのか、よくわかった」
ぴきりとこめかみに青筋を立てた先生が、見せつけるように舌なめずりをした。
『ぎゃああああ!ダメですよ先生!人体に害のないことでお願いします!』
「ははっ、考えとく」
こうして、あたしたちのよくわからない共謀関係は始まった。