『ていうか、先生』
「ん?」
すっかり居住まいを正して一服しようとしている先生に、ストップをかけた。
当の本人は、不思議そうな顔をしている。
…聞いちゃいけないことだったら、どうしよう。
若干の迷いを振り切り、あたしは単刀直入に口を開いた。
『さっき、前の学校では身体を要求されたって言いましたよね?』
「………………おう」
長い沈黙の後、先生は短く肯定の返事を寄越した。
ん?
蕪城先生の就任って、確か2年くらい前だったよね?
ってことはわりと最近の話じゃん!!
一人慌てるあたしを他所に、煙草とライターを机の上に放り出して先生は顔を顰めた。
…思い出すのも嫌なのか。
「………ここに赴任する前は、叡京高校にいたんだ」
ええええっ!?
あたしが受験しようか迷ってた学校だ…!
「…そこでも今回みたいに、夜中に出歩いてたら偶然生徒に出くわしてな…」
…ああ。
蕪城先生が苦々しく眉を顰める姿さえも、カッコいい…。
って!!
自重しろ、あたし!
こんな重たい空気流れてるんだから!!
「……世の中、上手くできてんだよ。…理事長の娘だったんだ、そいつ」
その先に言わんとしていることは、想像が容易かった。