「―――赤城さん」
鼓膜を震わせたのは、甘美な響きを持った低音ボイス。
弾かれるように顔を上げると、蕪城先生が眉を下げて笑っていた。
はっ!!
慌てて教室を見回すと、そこには誰もいなかった。
…先生、以外。
『えっ?ええ?あの、えっ』
「赤城さん、疲れているんですね。目の下に隈ができていますよ」
細くしなやかでそれでいて男を意識させられる指先が、あたしの眼下を滑った。
どきっ!
初めて触れたことに驚き、思わず心臓がどきりと跳ねた。
『(ち、違う違う違う!!!あ、あたしは先生に別に興味もなにもなっ、ないんだしっ…!!!)』
「赤城さんってば、僕の授業ですっかり寝てしまっているので。ふふ、今回だけですよ。特別に、この時間をあげます」
意味がわからずぱちぱちと瞬きをしていると、蕪城先生が目を奪われるほど綺麗な笑みを浮かべた。
「2時間目、赤城さんは保健室にいることになってますよ」
悪戯っぽい笑顔のまま蕪城先生はそう続け、しーっと口元に人差し指を立てた。
…っ、か…かっこい…
…いや!!
良くない!!
ぜ、全然良くない!!!!
良くないんだから!!
「……ま、俺が話あるから2人になりたかっただけなんだけどな」
―――んっ?