「あら。春姫さん、おはようございます」
バックに花を咲かせたような華やかで朗らかな笑みを浮かべ、繭が朝の挨拶をしてくれた。
営業スマイル、と言っても過言ではない笑みをあたしは返す。
…相変わらず窮屈だなぁ、学校って。
内心そんなことをごちりながらも、笑みは絶やさない。
『(あの男性が……昨日会ったあの人が、蕪城先生だったら…)』
この苦しい生活について話を聞いてもらえたのかな、なんて。
って、バカかあたし!
ばれたら絶対に大問題だっていうの!!
こんな根っからのお嬢様の中にあたしみたいな超・庶民がいたら悪影響を与えかねないとかそういうこと言われそう…!
いかにもカタブツそうな校長や教頭の顔を思い浮かべ、ぶるりと肩を震わせた。
やっぱりばれるわけにはいかない!!
「春姫さん?…昨日もそうでしたけど、なにか悩みごとでも…?私で良ければ、なんでも話してくださいね」
―ズキッ
『な、なんでもないですわ!…せ!聖書を読んでいて寝不足になってしまったのが辛くて…』
慌ててそう切り返せば、繭は一瞬だけ顔を曇らせた。