「ぷくくっ…、ははっ、でっけぇ口で食ってるし…!!」
笑い声を辿れば、目の前には煙草をふかしている男の人の姿が。
暗くて顔も体格も、ろくにわからない。
『(………っみ、見られてたあああ!?!?)』
ぼふっ!と顔が赤くなった。
い、今の最初からああ!?
あの大きな独り言からもしかして全部聞かれてたの!?!?
寒さではなく羞恥で真っ赤になった頬を思わず撫で、顔を俯かせた。
い、いくら他人だからって恥ずかしすぎる…!!
『(逆に相手の顔が見えなくて助かったかも…)』
また笑われたら、確実に立ち直れない…!!
そう思って、いっそ走って立ち去ろうとした時。
道路を走り抜けた車のヘッドライトが、男の人の姿をはっきりと映し出した。
『…………は、ぁっ……!?』
…いやいやいやいやいや、見間違えるわけがないよ?
今日だって昨日だって一昨日だって、その前にもあたしは見たんだから。
でも、あれ?
汚れたジャージに、ボサボサの髪に、煙草に、履き潰したスニーカーに、引っ提げたビニール袋には缶ビールだらけ。
…そんな、まさか。
紳士なんて言葉とは、真逆にいるような格好じゃない。
そこらにいる貧乏大学生、みたいな。
…そんな、そんな格好なのに。
「…っ、あー………やっべぇ」
……でもやっぱり、間違いない…っ!!
『かっ………蕪城先生ぃぃぃ!?!?!?!?』
紳士の面影が微塵もない、お嬢様学校のエリート教師の姿がそこにはあった。