お嬢様のフリをしなくても良いのは、とっても楽。
『(だからコンビニでアルバイトするのは、結構好きなんだよね!)』
バイトの制服から私服へ着替えながら、そんなことを染々と思った。
『山室さん、肉まんありがとうございました!お疲れ様でーす』
いつも通りの挨拶を済ませ、湯気を上げる肉まん を入れたビニール袋と鞄を持って店を出た。
『っ、寒…!!』
あまりの寒さに、コンビニの暖かい空気の中に帰りたくなった。
マフラー忘れたのはやっぱり痛かったよね…!
コートを目一杯たぐり寄せ、車と何度もすれ違いながら歩道を一人歩く。
速度を早めようとした時、かさりとビニールが当たる音にはっとした。
『……温かいモノは温かいうちに、だよね!』
この極寒を和らげてくれるに違いない肉まんをビニール袋から取り出し、逆に歩く速度を落とした。
ほんとはこんな往来で食べ歩きするものじゃないけど……。
『…たまには、良いよね……』
あたしはこの時、家まで食べるのを我慢しなかったことを―――1分後に、後悔する。