『……へ?』
間抜けな返事をすると、蕪城先生はぶすっと子供のようにむくれていた。
……いや、拗ねてる?
「頭悪すぎて溜息もでねぇな」
『……そ、そうなんですか』
「…それから、鈍感」
『へぇ、困りますねそれ』
「…………友達想いで、度を越すくらい家族想い」
『なんだ、良い子なんですね』
「…………………恋愛経験がねぇのか、無自覚で無防備」
『あはは、なんかそれ可愛い』
「…………………………………初めて喋った時、コンビニの客にナンパされてすげぇ困ってた」
『え、先生それ見てたんですか?』
蕪城先生は弾かれるようにキッとあたしを睨み付けて、物凄い早口で言った。
「す、ストーカーじゃねぇからな!?偶然な、俺が行ったら鉢合わせたんだ!そしたらめちゃくちゃ困ってっから、思わず助けて…!」
『お、先生優しいですね。それに、誰もストーカーなんて言ってませんよ』
笑いながら、泣きたくなった。
……なんかロマンチックな出会いだな、先生とその人。
あたしなんて、 大口開けて肉まん食べてた時に先生と会っちゃったのに…。
…良いなぁ、その人。
顔も名前も知らない先生の想い人に、燃えるような嫉妬をした。