幸せな味をこれでもかと堪能しながら、あたしはずっと蕪城先生のことを考えていた。


そして、ふと思う。




『(……先生が好きなのは、どんな人なんだろ…)』




知っても仕方がないことなのに、あたしは好奇心を抑えることができなかった。


たとえ虚しさしか、得られないとわかっていても。




『せ、先生の好きな人ってどんな人なんですか?』


「ごふっ!!」


『きゃ!?だ、大丈夫ですか先生!?』


「…平気だ。つーか、…はっ?どんなやつかって?」




蕪城先生は口元を伝うコーヒーを拭いながら、ひどく怠そうな顔つきで答えた。


…心なしか、やつれているようにも見える。




『いえ、あの、ちょっと気になって…!』




嫌なら答えなくても良いです、慌てて付け足す前に。


蕪城先生は眉根を思いっきり寄せた不機嫌な表情で、ぼそりと呟いた。




「………とにかく、すっげぇ頭が悪い」