「またお前になんかあったら困るから、俺も本気で言ったんだよ!!」
言い終わったと同時に、蕪城先生はバッと顔を伏せてしまった。
…表情はわからないけど、茶色い髪から覗いた耳が赤かった。
………先生、可愛い。
『蕪城せんせー』
「…いません」
『あははっ!意味不明なこと言わないでください』
「……んなことで照れるとか、中坊じゃあるめぇし」
蕪城先生は悔しそうに呟き、そっぽを向いたまま頬杖を付いた。
…な、なんかこっちまで恥ずかしくなってきたんだけど。
『せっ………先生にも、好きな人いたんですね!!』
「ごほっ!」
『わっ、…大丈夫ですか?』
「お、おぅ」
何故かむせ返った蕪城先生を心配しつつ、あたしは続けた。
『きょ、今日はクリスマスなんだから……好きな人を誘えば良かったじゃないですか』
「………は?」
『え?』
変な空気が流れた。
蕪城先生は地球外生物を見るかのような目付きであたしを見ている。
……な、なんですか?
「…………お前のが先約だったからな。約束は守るもんだろ?」
ずきんっ
…つまり、それって。
あたしとの約束がなかったら、好きな人と一緒にいれたってこと……だよね。
胸にどさりと、重たいものが落ちてきた気がした。