『あ、でも……』
“自分が譲渡した所為で経営権を持ってかれるなんてな、憐れなもんだ”
『……あの言葉は、ちょっと怖かったです』
じっと無言であたしを見ていた蕪城先生が、ふっと頬を緩めた。
え、なんで?
ぽけっとしてるあたしに向かって、蕪城先生は小さく笑った。
「…怖かった、か。でも、それだけ本気だったんだよ」
『本気って、婚約解しょ』
「違ぇよ」
ばっさり切られた。
むむ…とあたしが唸ると、蕪城先生は呆れたように眉を下げた。
「鈍いなァ、お前。……また胡桃坂がなんかしてきたら、困るだろ」
『…ああ、そうですよね。また婚約騒動なんてあったら困』
「だから違ぇ!!」
声を荒げた蕪城先生は口元をひくりと引き攣らせ、はーっと溜息を吐いた。
組んだ両手に顎を乗せ、上目遣いでこちらを見てくる。
……あ、赤くなるな顔!
「まさかはっきり言わねぇとわからないとはなァ…」
『っば、バカですいませんね!』
「……………お前に」
『はいっ?』
頬を仄かに赤く染めた蕪城先生が、吠えるように叫んだ。