「お前の親父さんの会社の名前くらい、知ってるだろ?
バカにされたのが癪に障ったのか、胡桃坂さんはカアッと顔を赤くした。
「当たり前ですわ!ウォルナットです!」
「そうだ。そのウォルナットは、会社を興した当初……合名会社だった」
合名会社。
つい最近、現代社会の授業で聞いた言葉だ。
無限責任社員2人以上から構成される会社…だった気がする。
「だが現社長―――胡桃坂孝嗣が就任し、有限株式会社に変わった。お前もそれくらい、知ってるよな?」
「…え、ええ」
有限株式会社。
有限責任社員である株主によって組織された会社…だよね。
でも、それが一体…?
「合名会社のままだったら、婚約解消しなくて済んだのにな。なァ、胡桃坂社長」
「……全くだな」
社長さんは自嘲気味に笑い、小さく肯定を示した。
合名会社と、株式会社の違い…?
も、もしかして…!!
「株式会社が有している株の半分を所有すれば―――会社の経営権は、その株主に移るんだよ」