―――婚約、解消?




驚きのあまり動けないでいると、いつの間にかステージの上には見知った2人がいた。


な、なんで…!




「うふふ、胡桃坂さんったらそんなお口を開けて」


「はしたないですわ、仮にもお嬢様なんですから」




くすり、と。


姉妹かと思うほどにそっくりの笑いを、2人は零した。


……華苗と繭、だ。




「あ、あなたたちの仕業なの!?脅迫でもしたのなら、訴えるわよ!?!?」




動揺を隠しきれていない胡桃坂さんを見て、華苗は喉の奥で笑った。


明らかな、嘲笑。




「私たちが用いたのは、あくまでも合法ですわ」


「そうですわよね、胡桃坂社長?」




話を振られた胡桃坂さんのお父さんは頭を垂れ、諦めきった表情で大きく頷いた。


胡桃坂さんはわなわなと震え、我慢できなくなったようにお父さんの腕を掴んだ。




「クリスマスプレゼントにわたくしの欲しいものをくださると、約束したじゃありませんか!!」


「す、すまない、絵理子…!し、しかし、経営権がなければ…!」


「……経営権…?」


「俺たちが使ったのは、株だ」




今まで黙っていた蕪城先生が、おもむろに口を開いた。




「それは、どういうっ…」




狼狽える胡桃坂さんを目で笑うと、蕪城先生はタバコを携帯灰皿に押し付けた。