―――婚約は、やっぱり本当ってこと…?




「美葛さん、わ、わたくしを騙していたの…!?」


「騙す?人聞き悪ぃな。春姫と艷倉と炎王寺以外には、秘密にしてただけだ」




ハッと鼻で笑うと、蕪城先生はステージに向かって歩き始めた。


ざり、とスニーカーにこびりついた泥と砂が真紅の絨毯を汚す。


…それすらも、綺麗に見えた。




「なんてことを!わたくしを騙したことには変わりないわ!!」


「じゃあ婚約、取り止めるか?」




待ってましたと言わんばかりに、蕪城先生が即座に答えた。


胡桃坂さんが、ぐっと息を呑む。




「こんな汚ぇ男、嫌だろ?お前の大嫌いな“庶民”だからなァ。どうだ、今ならまだ戻れるぜ」




胡桃坂さんを挑発するように、また一歩、蕪城先生が近付く。


クラスメイトたちは、自分たちの知っている蕪城先生と彼が同一人物だと、まだ信じられていないようだった。


その証拠に、皆が皆、同じような顔のまま固まっている。




「なァ、どうするんだ?」