…蕪城先生は、少し苦手だ。
『(なーんか、紳士系の男って無理なんだよね…)』
周りの友達とは違い、あたしは根っからの庶民体質。
どうも丁寧すぎる口調や仕草には背筋が粟立つというか……。
…要するに、気持ち悪い。
『(皆はああいう男としか接してないんだよね、きっと…)』
未だに騒がしい廊下に目をやれば、華苗と繭の姿も見えた。
中心で微笑む蕪城先生は、もうすぐ授業だというのにろくに注意もしない。
『(あーいうところ、嫌いなんだよね!)』
教師ならビシッと注意しなさいよね!
そんなことを思いながら、余った時間が暇だったため、前回の授業の復習を始めた。
…やっぱり…何度解いてみても全然わからない…。
それでも蕪城先生に質問するのはなんだか癪に障って、実行できないでいる。
周りの友達に聞くのもありだけど、放課後はさっさと車で帰宅してしまう。
中々、ゆっくりと時間が取れないのが現状だ。
『(…でも蕪城先生には聞きたくない…)』
他に数学教師は何人かいるものの、誰とも面識がなくさすがに行くのは気が引ける。
……こうしてよくわからない内容が積み重なり、今日まで来てしまった。
『(あああ…このままじゃ学年末テストもやばい…!!)』
今年あったテストは、数学だけ殆ど赤点ギリギリだった。
このままいけば確実に、学年末テストは赤点になるよね…。
渦巻く思考を遮るように、チャイムが鳴った。