『行ってきまぁす』
玄関を開けて足早に家を出る。
「いってらっしゃい」の代わりに「ニャ〜」と送り出してくれる相手に、人差し指を立てて「シッ」と怒って見せた。
しょんぼり黙る相手。
「チビ太〜そんな顔しないで?ごめんね、でも大家さんにバレちゃうから」
チビ太…
猫のチビ太。
チビ太を抱き上げるために、もう一度玄関を閉めてしゃがみ込む。
「寂しいの?ごめんね、今日は残業もないし早いから」
「ニャン…」
まだ小さなチビ太を抱き上げて、おでこにキスをして私はまた後ろ髪を引かれる思いで手を振って家を出た。
「行ってきます」