「え…いや、あの…」

「あのね、今日行けることになったんだぁ!だから、放課後、あたし玄関にいるね?一樹、部活終わったらきてね!」

「え…だからあの」

「ん?」

「俺、一樹じゃない…んすよ」

「…え!?うそ〜!あたし間違えたのかあっ」

電話の向こうで
彼女は恥ずかしそうに笑った。

「あれ?じゃあ、君は……弟の、良樹くん??」

「あ、はい」

彼女が、俺の名前を知ってたことに驚いた。

「そっかあ!声、似てるからわからなかったよ〜」

「ははっ、そんなに似てますか?」

「うん、すごく」

初めて話したのに
こんなに話ができるなんて思わなかった。

「あ、じゃあそろそろ電話切るね?」
「はい、じゃあさよなら。兄貴に言っときます」
「え?そう?ありがとう。じゃあ」

“ガチャ…―――”

「良樹ー!!まだかぁ?」


俺は、すっかり
兄貴からの頼みを忘れていたようだ。

「ああ、今いくよ!あ、さっき中西夏美って人から電話あったけど」

「え?まじ〜?なんだって?」

「今日放課後、待ってる、だってさ」

「ほー。サンキューな」

「おお」

俺は兄貴の携帯を持って部屋を出た。