あのとき……
保健室でキスしたとき、
みさきさんが目を覚ましたのは、偶然だと思ってた。
たまたまだ、って。
だから俺は、深くは考えなかったんだ。
気づかれなくてよかったって、その気持ちのが大きかったし。
だけど、
それは偶然なんかじゃなかった。
……たぶん。
だって。
あと後ずっと、みさきさんは、キスする度に目を覚ましたんだから。
ぐっすり眠っているのに、なぜかぱっちり目を開ける。
声をかけても、
体をゆすっても、
頬をパチパチ叩いても……
何をしても起きないくせに。
唇を合わせると、なぜかすぐに目を覚ます。
しかも、キスされたことは覚えていない。
俺にとっては、なんとも都合のいいことだった。
正当な理由のもと、
バレずにこっそり、
好きな人に触れられるんだから……