なのに……
なぜか、今日は近くにいない。
知らない間に何かされるのは困るけど、やっぱり傍にいてくれないと不安になる。
……どうかしたのかな?
暗がりの中をゆっくり歩いて、私はそっと部屋を出た。
廊下に出ると……
リビングから漏れる明かりが見えた。
近づいてみれば、聞こえてくる話し声。
あ…そっか。
おばさん、帰ってきてたんだ?
なのに、私ってば、挨拶もしないで眠ってたの?
うわぁっ。
さすがにマズイと思って、
気まずいながらもドアに手をかけたとき……
「……俺は、行かない。」
中から聞こえてきたのは、低くて冷たい声。
びくっとして、思わず手を引っ込めてしまった。
今のは……
「そんなこと言わないで…「だから、行かないってば。」
声を荒げて吐き捨てるように言った航くんは、明らかにいつもと様子が違う。
「なんで今さら……」
……“あの話”だ。