近くに、航くんの気配はなかった。
ベットはおろか、部屋の中にも。
……珍しいな。
いつもなら、絶対に傍にいてくれるのに。
私が眠っても、放置したりしないで、隣で……
「……っ!」
そこまで考えて、はっとする。
そして、もう1度急いで自分の状況を確認した。
……よし。大丈夫だ。
服もちゃんと着てるし、目立って変なところもないし。
今日は何もされてない。
思わず、安堵のため息が漏れた。
航くんは、油断ならない。
最近はもう、本当に危険だ。
私が寝ていようが、おかまいなしに手を出してくるんだから。
不自然に乱れた服。
覚えのない赤い“跡”。
目を覚まして何度驚いたことか。
航くんにとって“寝込みを襲う”なんて日常茶飯事。
私が怒ると、
「だって、可愛い顔して寝てるのが悪いんじゃん。」
って。
恥ずかしいセリフで、あたかも私のせいみたいに言ってのけるんだから。