「私はいつまで“みさきさん”なの?」
……我慢、できなかった。
気がついたときには、言葉を発していた。
「え……?」
案の定、驚いた様子で私を見つめる航くん。
全然、わかっていない。
「なんで、まどかは“マドカ”なのに、私は……」
……なんか、言ってて恥ずかしくなってきた。
これじゃ、まるで……
いたたまれなくなって俯いた私に、
「あー…なんだ。そういうこと?」
何かを悟ったような航くんの声。
そして、
「へぇ…。4年目にしてようやく、だね。」
立ち上がって、私の隣へと移動する。
「こんなに簡単なら、もっと早くに試しておけばよかった。」
私の髪をすくって徐々に顔を近づけながら、航くんは声を弾ませている。
……気づかれた。
航くんは鈍感だけど、なぜか私の気持ちを読み取るのだけは早い。
少しの言葉で、すべてがわかってしまう。
「それ“ヤキモチ”って言うんだよ?」
耳元で囁かれた言葉は、
まぎれもない事実だった。