「マドカに言われちゃったよ。」
キッチンにいた私のところにやって来て、航くんは無邪気に笑った。
「え…?」
手を止めて航くんを見上げれば、
「コウちゃんの“彼女”って、
みさきちゃんだったんだね、って。」
さらっと言う。
「知ってたなら教えてくれればよかったのに、って。」
「……」
日曜日の夜以来、まどかとは顔を合わせていなかった。
まあ、いつものことなんだけど。
茉奈の家か航くんの家。
行ったり来たりの私は、家に帰ることのほうが珍しいから。
「てっきり、怒られるかなと思ってたんだよね。
ほら、“大好きなお姉ちゃん”を横取りしたわけだし?なのに、意外な反応だったよ」
ひょいと、作ったばかりのおかずをつまみながら、航くんはいつもの調子で続けた。
「許してくれる、ってさ」