「じゃあ…遠慮なく、こういうことするよ?」
聞こえてきた声は、少しだけ震えていた。
「うん…」
そっと、航くんの背中に腕を回しながら答えると、
ぎゅっと、さらに力を込めて抱きしめられた。
……初めてだった。
こんなに、誰かを近くに感じたのは。
体温も心臓の音も、自分のじゃない。
なのに、すごく心地よくて安心する。
ずっと…こうしていたい。
「キスも…いっぱいするよ?」
「うん……」
遠慮がちな言葉とは裏腹に、抱きしめる腕に力がこもる。
「でも…その先はまだしない。」
「うん……?」
「目標があるから。それを達成できるまでは我慢する。」
「目標……?」
「そう。今はまだ内緒だけどね」
そう言って腕をほどいて私を解放すると、航くんはいつもの笑顔を私に向けた。
そして、
「じゃあ、早速……」
そっとキスをした。