そんな、ある日。
いつものように航くんの顔が近づいてきて、
私もゆっくり目を閉じた…そんなとき。
「あのさぁ…」
近づいていたはずの距離が一瞬にして離れたのがわかって、私は急いで目を開けた。
「いい加減、はっきりしない?」
私の目に映ったのは、呆れたような…でもひどく困ったような航くんの顔。
「え……?」
わけのわからない私は、ただ見つめることしかできない。
「俺も…結構、しんどくなってきた」
悲し気に瞳を伏せる航くんに、何て言えばいいのかわからない。
そんな私にちらっと視線を送ってから、まるで独り言のように話し始める航くん。
「会う度にさ…別れ際、そんな…寂しそうな顔でキスをねだられて……
キスしたら…幸せそうに笑うし……」
……え?
「俺だって…期待しちゃうじゃん」