気がついたときには、唇が重なっていた。


咄嗟に目を閉じる。


告白のとき以来だった。


2度目のキス。


最初のときよりもわずかに長く、そしてやさしいキス。


なんだかすごく、心地よかった。



「帰ろ?」



ゆっくり顔を離すと、航くんはにっこり笑って私の手を握って歩き出した。


頷いて後を追う私の心は、すごくぽかぽかしていた。









それから……


それは習慣になってしまった。


私は、覚えてしまったから。


言い表しようのない、この寂しさを消してくれる方法、を。



立ち止まって見上げれば、それが合図になる。


航くんは、必ず私にキスをくれる。


やさしくてあったかい温もり、を。


もう、儀式みたいなものだった。


これをしないと、私は帰れなくなっていたんだ。




思えば、

航くんが私に触れるのは、このときだけだった。


それ以外は、決して手を出そうとはしなかったから……