「先輩はさ、俺のこと嫌いではないよね?」
再び、まっすぐな視線が突き刺さる。
「うん……」
“嫌い”ではなかった。
好きか嫌いか?と聞かれれば、当然“好き”のほうだったと思う。
それが恋愛感情かどうかは別として。
「じゃあさ……」
座っていた私に、航くんが一歩近づいた。
なぜか、ドキッとしたのを覚えている。
「俺を、先輩の“彼氏”にしてくれない?」
「は?」
……冗談だと思った。
航くんの性格上、十分にあり得ることだったから。
それまでだって、しょっちゅう騙されてからかわれていた。
「先輩、おもしろいんだもん」
怒ると、そう言って無邪気に笑うんだ。
……仮にも“先輩”なのに。
だから、その時も、そうなると思ってた。
でも……
「ダメ?」
私を覗き込むその瞳は、今までに見たことがないくらい真剣なものだった。