「すっかり忘れてたよ」
そう言って立ち上がると、
私を促すように入り口に向かう。
その背中を見つめながら、
「待って!」
気がついたら呼び止めてしまっていた。
「ん?なに?」
いつもの笑顔で振り返ったコウちゃん。
「えっ…と……」
まっすぐに見つめられて、顔が火照ってきて…
思わず視線をそらしてしまった。
自分で呼び止めておきながら、なんて失礼なことを…
反省しながらも、もじもじしたまま顔を上げられない私。
さっき、あんなことをしようとしたばっかりだし、なんか…
いつまでも俯いてたままの私にしびれを切らしたのか、コウちゃんは私のほうに戻ってきて、
「なに?どうかした?」
顔を覗き込むようにかがんだ。
その瞳は、
すごくやさしかった。