ここにいるのは、私たちだけ。 来るときだって誰にも会わなかったし、下駄箱だって閑散としていた。 テストが近いせいか、部活も休みのところが多い。 授業が終われば、生徒たちはまっすぐ家に帰るらしい。 さすが進学校。 そう。 だから……誰も来ない。 私は、無意識のうちに手を伸ばしていた。 なんでだろう? なんか、無性に触れたくなってしまったんだ。 まるで見えない力に吸い寄せられるように、そっと近づいていく。 「ん……?」